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人工知能学会のすゝめ (第37回 人工知能学会)

2023年6月6日から9日かけて、福岡のお隣の熊本県熊本市で行われた人工知能学会にスタッフの研鑽および、トレンドの把握のため参加してまいりましたのでレポートいたします。

人工知能学会とは

人工知能学会は人工知能研究に関わる研究者のための研究発表の場であり、全国大会は今回で37回目を迎えます。

https://www.ai-gakkai.or.jp/

同時に、性質としてインターネットを活用する企業の技術交流という性質もあり、機械学習に関する研究をされている方のみならず、広いジャンルのソフトウェア技術者の参加もとても多いです。

一般的に大学等研究機関の連合や互助組織として存在する「学会」は年次の総会が持ち回りで実施されます。(ちょうどソフトウェアエンジニアのカンファレンスと同じような感じです。)

医学系を除く多くの場合研究機関に属していない人も参加することができます。

今回の雰囲気

今回は近年出来たばっかりのバスターミナルや大型の会議場、ショッピングモールが一体となった「サクラマチ クマモト」が会場でした。

熊本城も見える好立地。バスターミナルと商業施設が一体となった会場です。

学会期間中もSlackが大いに盛り上がり、今回の会場である熊本市中心部の美味しいもの情報が高速で配信されていました。

Twitterのハッシュタグでの投稿も盛んで 詳しくは#jsai2023で検索ください。

人工知能学会も学術学会としてはかなり大規模な方だと存じていますが、それでいて、いっそう会場の方のキャパシティの大きさを感じるほどでした。

アルファベット名がついた会場が並んでいますが、実に「U会場」まで存在しており、かつそれぞれの会場が100名規模で収容が可能な分科会会場になっていました。

さまざまな発表

人工知能学会では他の学会(情報処理学会に例)などと同じく、同時刻に複数の分科会がセッションを行う形式です。

今回はオンラインでの録画がなされたセッションも多かったので、同時刻に気になるものがあったり、参加できない日のセッションもあとから見られてとても安心でした。

タイムテーブルはこちらから (上位のページもご参照ください。)

機械学習:業務応用Ⅱ

機械学習を用いた予測に関しては、我々も平素カフェを利用者の方が快適に過ごせるような予測が行えないかと模索中であります。

購買行動のデータ化の事例がわかりやすく、いかにしてロイヤリティを高めていくか、というお話が、ちょうど我々の住む市内にある福岡製袋工業株式会社さん(https://ofukuro.co.jp/)の事例をもとに研究発表がなされていました。

一般にもトレンドになっている深層強化学習についての話題では、手法の改良について述べられ、自然強化学習に至る道のりの説明が丁寧で調べてみよう、というモチベーションが高まりました。

[4I2-OS-1a] AutoML(自動機械学習)

ベイズ最適化はかなり専門課程としての経験がないと話題についていくのがやっとだったりしましたが、機械学習システム自体が発展を重ねるのはシンギュラリティだなと思いながら拝聴しました。

CNN(畳み込みニューラルネットワーク)は多くの手法が提案されています。自分のような機械学習を専門としない技術者も、画像分析などをする際に経験していることも多いかと思いますが、より精度の高いアーキテクチャ探索を行うために、GA(遺伝的アルゴリズム)が用いられているそうです。なかでも熱力学的遺伝アルゴリズムにフィーチャーしたお話で聞き馴染みのないワードに興味津々でした。

[4F3-GS-10] AI応用:都市・環境・建築計画

自身が位置情報に興味を持ってWeb開発を行っている技術者ですので、ビッグデータと地図を密接に結びつけたセッションが多く、うなずきつつセッションに参加しました。

企業によるセッションも含まれており、日立造船さんもYahoo!Japanさんも、その会社ならではの解析が伺えてとても良かったです。Yahooさんにいたっては、検索エンジンに入力されたデータを使える、というのがとても羨ましく思えました。

[4B3-GS-11] AIと社会

急速に私達の生活に浸透したAIが現在どのような受け取られ方をしているか、あるいは今後どのように社会に受容されるかという内容のセッションでした。

セッションの多くが社会科学的見地に基づく分野横断的なものであり、かつ、我々も常々お力添えしている「シビックテック」に関わるものでした。

最後のセッションの「障害のある人の文化芸術活動における人工知能技術の活用から見えてきた可能性と課題に関する報告」ではプロモーションとしてのAIを用いたアート制作の歴史からstylegan2(https://github.com/NVlabs/stylegan2)を用いて、障碍のある方のサポートを行った話は特にその性質が強く、

認知症フレンドリーテックや、アートxエンジニアリングといったイベントで人が集まるエンジニアカフェにおいて、少しずつコミュニティの輪を広げていったり、あるいはコミュニティ同士が混ざり合う地点で居続ける大切さを再認識しました。

オリィ研究所がバックアップする「分身ロボットカフェ (https://dawn2021.orylab.com/)」の常設化などの流れもあり、アクセシビリティに対する社会実装としてのAI活用は今後も注視し、助力していきたいと思います。

当日はなかなか見られなかった以下のセッションも気になりました。

OS-17 地震研究と人工知能

GS-4 Webインテリジェンス

キーワードや分科会での絞込み検索もできますので、こちらも参考になさってください。

https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2023/class

終わりに

筆者の勤務の都合もあり、最終日のみの現地参加となりましたが、最終日もポスター発表や企業ブース、出版ブースなども行われていました。

企業ブースでは大手のIT各社で導入を進めているAIサービスの説明から、Web企業で進めている推薦事業だったり、あるいは近年勃興するAIベンチャーの尖った事業紹介などをエンジニアの方自らが楽しそうに話されていて印象的でした。

https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2023/session/4Y001-55/tables?rYnAJdxYWe

前者の大手では導入するメーカーさんに合わせたルールベースでの構築から柔軟に現場に合わせたモデルを作成するのが流行っている(ある程度枯れてきている)ようですね。

休憩ブースやポスターセッションの場所も確保された展示会場

会場には学会のためにWifiが敷設してあり、各時刻のセッションを現地で、かつオンラインでザッピングしながら参加できて大変参加しがいがありました。

人工知能学会の会費は非会員であれば直前申し込みで30000円と個人では手が出にくい額ですが、実はこの金額は入会金+正会員費(年額)+正会員値段での学会参加費 と同額なので、いっそのこと学会員になってしまう、という手段もあります。
参考:https://www.ai-gakkai.or.jp/about/membership/

学会員になると定期的に学会誌が届き、全国5000人超の研究者とネットワークも広げることができます。

学会誌を毎号読むだけでも最先端に近い知識を得ることができおすすめです。

会場の書籍ブースでも、狙っていた本が割引されていたり、新著の情報があったり…!

人工知能学会は国際的な学術会議とも連携しており、世界にリードする研究者へも道しるべを提供しています。

なお、国際的な人工知能に関する会議としては International Joint Conference on Artificial Intelligence(IJCAI ) が高名であり、欧州連合加盟地域で行われるECAIやアメリカ地域で研究者があつまるAAAIなどの情報も必見です。

今回のイベントは発表件数が950件を超え、四日間の参加者が3500名(現地参加は2400人超)とのことでした。プラチナスポンサーも44社にものぼり、学生のボランティアスタッフの協力もあり実現した大会運営だったそうです。

次回は浜松で行われるとのこと。エンジニアカフェでも昨年より行っているDeepLearing Tenjin を筆頭に、一層、機械学習まわりの造詣を皆様と深めて参ります。

ぜひ、次もまた会場でお会いしましょう!!(1~3日目のランチョンセミナーや懇親会も大いに盛り上がったとのこと…来年は参加したい…)

 

閉会後に同じ建物に入っていた「黒亭」で食べた熊本ラーメン。焦がした玉ねぎのマー油が食欲をそそります。

 

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