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情報処理学会第85回大会にスポンサードを行いました。

始めに

福岡市エンジニアカフェはエンジニアリングに関わるみなさまのサポートをミッションの一つとしており、

どのような形でサポートできるかを模索しております。

今回は情報工学系の大学の学部学科等で広く論文の寄稿・発表が行なわれる情報処理学会に福岡市エンジニアカフェとしてスポンサーいたしました。

会場入口の看板でもしっかりロゴを表示してもらいました!ありがとうございます!

その特典として第85回情報処理学会全国大会の聴講権をいただいたので現地に研鑽の一環として参加してまいりましたのでレポートいたします。

 

会場

今年度の会場は東京都調布市の電気通信大学にて行なわれました。


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情報工学に関わるお仕事をする我々の中では 電気通信大学 自体が有名で、卒業生にも著名な技術者が多数いらっしゃいます。

国立大学では珍しく夜間に開講される講座を受講できるコースもあるので、社会人のリカレントの受験記などもネット上には記録があったりするようです。

二部学部については→https://www.uec.ac.jp/department/ie_evening/

以前、執筆者の田中がご縁があって当学会には足を運んだことがあったのですが、現地参加をしよう!という声を少し前から周りの大学関係者から伺っていた次第で、どれくらい現地参加の波が戻ってきているのか確認したいというモチベーションがあり、福岡より足を運んでみました。

雰囲気

情報処理学会は学術機関としては大学・大学院のみならず、高専に所属されている先生方や学生の方、あるいは高校で情報教育に携わっている方、企業で研究されている方までいらっしゃいます。

歴史が長い発表の場ではあるのですが、決して「お硬い」感じではなく、情報処理に関わるみんなの文化祭、という雰囲気があります。

オムニバス形式で講義を受けることができ、例えば「セキュリティ」「人工知能」「制御」など広い範囲の分科会が同時刻に、講義室を分けて行なわれます。

タイムテーブル→https://www.gakkai-web.net/ipsj/85/event/html/event/event.html

今年度は発表者は現地での発表かzoomでの発表か選ぶことができ、同時に、参加者も現地での視聴、および遠隔地での視聴を選ぶことができました。

また、今回は電気通信大学内にサテライト参加用の視聴室も設けられており、自身の予定に合わせた参加がしやすかったと思います。

ただし、基本的には内容はアーカイブ視聴はできない方針とのことで、興味のある分科会が同時刻にかぶっている場合は2つのデバイスを駆使して同時に違う配信を視聴したり、という多少アクロバティックな対応をせざるを得ない場面もありました。

なので、少々値段は張りますが、本大会に提出された論文が掲載される論文集は余裕があれば購入すると良いでしょう。

一般的に、学会の年次大会は、会場によってはどうしても、モニターが導入されておらずスクリーンへの投影が行なわれる場所もあったりします。

同じキャンパス内でも建物の建った時期によって設備が大きく違うこともあります。学生の時分はケータイで先生が写したスライドを撮ってあとから見直させてもらったりしたことを思い出して懐かしい気分になりました。

コロナ禍を経てオンラインセッションに資料が最適化されがちで、現地のスクリーンでは見づらいこともあるかもしれません。

現地参加であっても、タブレットPC,メインPCの構成で、オンラインのZoomなどに入りつつセッションを訊くのもいいかも知れません。

Bluetoothのワイヤレスイヤホンも思いの外便利でした。

また、一つの所属組織への登録で、全国の学術機関で利用できるEduroamが提供されていたほか、研究機関に属していない自分のような参加者を見越して、運営側が電通大と交渉して速度の速いWifiを提供してもらえて非常に助かりました。

ちなみに、ややオフィシャルな場なので、発表者を中心にスーツでお見えの方が多いです。

発表など

うまくメモを取れたものに限りますが、いくつか分科会や共通セッションについて簡単に振り返ります。

IoTセキュリティ最前線

2時間半ほどの講義で農業におけるIoTの利活用からモビリティにおける実地の話などで盛り上がりました。(袖先生、吉岡先生が座長)

様々な場所で活躍するIoTアプリケーション

情報処理学会のひとつの特徴として、必ずしも「情報工学科」やそれに近しい学部学科だけでなく、様々なバックグラウンドを持つ研究者が発表をされる、というものがあります。

昨今はむしろ何らかの形で情報処理に関わっていない研究のほうが少ないと思います。

水田の水位のモニタリングはcmのオーダースケールでの値がわかればいい、という話や、
無線通信 の規格で LPWA を利用している話、ソラコムさんの既存の結構制御が難しかったお話など、各先生とその研究室における試行錯誤を伺えてワクワクしました。

 

また、IoTの周辺領域の話としてバスロケ(バスの位置情報利活用)の例で石川県野々市市の「のっティバスロケ」が上げられ、バス停の網羅性を活かして子供の見守りを強化していこう、という施策はなるほど〜と頷きました。 (エンジニアカフェとしては昨年のNT金沢にお邪魔する際に野々市市の金沢工業大学を見学していたので身近さがありました。)

似たようなバスロケーションの施策では最近では青森市営バスのIchigoJamを用いたリアルタイム位置発信が思い起こされますが、(http://www.sinjidai.com/ichigo/) こちらの見守り実験はバス停に固定される都合、ラズパイを用いてるそうです。

九州に住む人間としては、どちらも雪の深い地方であるのが興味深く感じました。(研究を進める上での蓋然性があったりするんでしょうか)

また、セキュリティやインフラの分野においては「推測するな、計測せよ」という金言がよく言われますが、実際にIoT 機器をtelnet経由で調べてみると相当数な攻撃がされていることが研究によってわかっているようです。(デフォルトのパスワードに決め打ちで攻撃されやすいのも広く知られています。)

https://sec.ynu.codes/iot は一見の価値アリ!

受動的な計測方法としてダークネットモニタリング / ハニーポットが紹介されており、基本情報技術者試験でカジッたことのある私にも聞き覚えのある話から深堀りされており、調べながら拝聴するのがとても体験が良かったです。

リオオリンピックの際にはIoT機器が乗っ取られて1Tbpsを越えるDos攻撃が計測されているそうでで、手口としては「やめてほしいならビットコインを払え」というパターンなど時代に即したアップデートがアンダーグラウンドでも行なわれているんだなとドキドキしていました。

7年前の時点でこれほどの攻撃が!

ちなみに最近ではGitHubでオープンでなされたセキュリティ上の脆弱性報告が悪用されることもあり、Web開発者の我々にとっては卑近な話ですね。

「攻撃」がビジネスとして成り立ってしまうことが根本原因として解析されており、元をたつにはどうしたらいいか、など数年後もまた経過を追いたい内容でした。

アジャイル開発オムニバス

オムニバスセッションで、こちらは上記に比べて特にWeb開発者の我々にとってはより身近な話題でした。

我々がWeb開発を生業にして、需要と供給のバランスの上でサービスを提供したり、製品をコーディングで構築し納品する上では「契約」は避けては通れず、法務とどのように関わって行くべきか、というお話や、

言葉はWell-Definedではない側面があって、【委託】という言葉の意味も職掌ごとに変わることもある、という話もあったりして、

のぞみ総合法律事務所の弁護士の方も監修しながら質問に補足していくかなりいいセッションでした

どのように定型化していくか、知識レベルを足並みやサービスに対するモチベーションとともに合わせて行くか、『型』の浸透って大切なんだなと感じました。

終始、あるあるが間に挟まれていて特にSIの方などは頷くことが多かったのではないかと思います。

可視化と情報推薦

(学生セッション)

こちらも自分がホームグラウンドにしているWeb開発からもタッチしやすい範囲で、フラッと参加させてもらいました。

デザインとアクセシビリティについての議論があり、デザインを専攻として修めている方のお話を聞きつつ研究のモチベーション、ものづくりのモチベーションをどこかにメモしていくのは大切だなと感じていました。

先生方もちゃんと「すこし意地悪な質問になってしまうかもしれないのですが」とエクスキューズしつつ研究の面白さを引き出していたりして、次世代の育成の場として学会が機能している様子が垣間見えて部外者ながらに感動を覚えました。

野球における配球傾向のお話は仮説の組み方が上手で、打者タイプあるい投手のタイプでどのような配球傾向があるかというのを計量していて、ビデオゲーム以上に戦略が練り込まれている性質が感じられて面白かったです。

そもそもこの配球データを収集している企業(データスタジアムさん)があることに驚き、いい解析は良いデータから、というのは真だなと感じました。

先生方のコメントいわく、ややチェリーピッキングな側面も否めないとのことで、ゴールとしては「実際の試合に役立つ」という目的を設定して、この手の分析は網羅解析をするとよい、ということに、研究している学生本人だけでなく、こちらも勉強になりました。

研究のストラテジー以上に、時系列分析の解析手法に興味を持つきっかけになったセッションでした。

昨今の隆盛の先端を聞けたのは法政大学で進められているディープラーニング将棋ソフトのお話で、Bonanza以降しばらく追えていなかったのですが、

dlshogiはDNNの計算にリソースがかなりかかってしまい「詰み」の探索が苦手である弱点を克服しようと育てられてきていることや、不均衡データの学習バッチ学習法といったキーワードや、
世界コンピュータ将棋選手権 は最新より一つ前の回までGitHubで公開されていることなどを伺えてよかったです。

Unoやガイスターを題材にした完全情報ゲームと不完全情報ゲームにおいて合理性から脱却し「駆け引き」をどう攻略させるか、といった話や、危険度推定やSVRを題材とした麻雀の待ち牌予測の話題はDeepLearning Tenjinでも取り扱ったな〜〜と伺っていました。

ちなみに

 

上記のようにつぶやいていたところ、九州工業大学の井上先生からリアクションをいただき、お昼の情処ラジオですこしインタビューしていただけました。その節はありがとうございました。

また、有識者と行く情報処理ツアーは学会歴が長く著名な先生にAI or メタバースの話題に沿って案内をしてただけるオプション企画でしたがとても楽しそうでした。光学迷彩で話題の稲見先生が案内人でした。

井上先生近影


最後に

今回の情報処理学会は3日間行なわれ、各日1800人ほどが訪れたとのことです。

とはいえまだまだオフラインへの回帰は完全とは言えず、懇親会もごく小規模で、大会議室も非常に静かな感じでした。

現地参加も醍醐味ではありますが間違いなく遠くから参加しやすくなったことはハイブリッド型のとてもいいところだと思います。

(運営する側の負担は大きくはなりますが…運営の方々おつかれさまでした!)

誰でも表紙を飾れる顔出し看板。(大学や企業によっては写真の提出を求められる組織もあるらしく…)ちなみに右下のイラストはLINEスタンプとして購入ができます。

本当に同時に見たいセッションが多いイベントでした。

私達の体験からみなさまによりよい知識、技能等を還元できますと幸いです。

同様に「自然言語処理学会」「人工知能学会」「電気通信学会」等もソフトウェアエンジニアのみなさまが親しまれている技術カンファレンスに近い雰囲気がありそう、とのことでおすすめがありました。

最近では学会の分科会規模の団体からの出版などもあっておりおすすめです→コンピュータビジョン最前線

これをご覧になったみなさまも、「こういう学会にいくといいよ!」というおすすめなどがあればぜひTwitterDiscord、来館時などにお声掛けくださいませ。

また、情報処理学会は各季節でイベントが行なわれています。ぜひお近くで行なわれるイベントがありましたら足を運んで見てください。

情報処理学会の機関紙である【情報処理】は書店でも購入でき、情報処理の最前線を垣間見ることができます。技術系のマガジンと同じスタンスで読み進めることができおすすめです。

会場にて頂いた分はエンジニアカフェの蔵書コーナーにも掲示していますのでご覧ください。

特集されている「話題の技術者」が顔見知りだと気恥ずかしい気分に。

今後とも福岡市エンジニアカフェをよろしくおねがいします。

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