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DevRelCon / DevReljp 2023に行ってきた!!

およそ三年ぶりに大規模な開催となったDevRel/Japan CONFERENCE 2023 (DevRelCon Yokohama 2023併催 2023年3月10-11日)に行ってまいりましたのでレポートいたします!

https://devrel.tokyo/japan-2023/

 



@EngineerCafeSTF

 

当日のツイート

 

我々はエンジニアコミュニティへの支援をミッションの一つとして開館以来取り組んでまいりました。今回は併催となったDevRelCon、およびDevRelJapanにて、福岡市エンジニアカフェとしてスポンサーを行い、福岡のエンジニアコミュニティや市としての取り組みを周知するとともに、ネットワーキングを行って参りました。

以前もエンジニアカフェからはコミュニティマネージャを務めるMr.Griffithsが福岡のエンジニアコミュニティについてオンラインで登壇しましたが、今回はその後のエンジニアカフェおよび福岡のエンジニア事情についてのレポートをスポンサーLTとして行いました。

https://tokyo-2021.devrel.net/speakers/laurie/

 

どんな雰囲気?

そもそもDevRelとは?

Deveroper Relationship、技術者やそれを支える人々の関係性を強固なものにしていこう、というムーブメントで、世界各地でDevRel Conferenceの名前で、DevRelに特化した催しが開催されています。

テックカンファレンスでありつつ、ネットワーキングを業界全体で作っていこう!という気概のあるイベントです。

技術者の人材は流動的であり、それを支えるコミュニティを更に支えるいわゆる「メタコミュニティ」の趣もあります。

前述の通り、日本では3年ぶりの開催で、イベントに先立って、コアな運営メンバーの方々からの発信などもSNSで盛り上がっていました。

【公式ツイッター】

https://twitter.com/DevRelConTokyo

【ハッシュタグ】

#DevReljp #DevRelCon

DevRel Tokyoの主催であるMOONGIFTさんはかつてブログとしてWeb開発について発信されている「技術ブログ」の先駆け的存在であり、20~40台の技術者ではお世話になった方が多いのではないかと思います。(今なお人気です。)

DevRelRadioとかもおすすめ!

 

DevRelのメンバーの方にはかつてエンジニアカフェにおいて技術ハンズオンしてくださった方もお見えでした。

https://zenn.dev/devrel/articles/18e9e7b34a24b1

Odashoさんのブログ

https://zenn.dev/devrel/articles/e5374df919550e

エンジニアフレンドリーシティ福岡がバックアップするイベントに参加した証、激レア黒色エンジニアカフェTシャツを来てきたOdashoさん

どんな人がくるの?

参加される方の属性としては企業に所属されているエンジニアが多く、肩書として「エバンジェリスト」「アドボケイト」「アーキテクト」「コミュニティマネージャ」と名刺に書かれている方が多くいらっしゃいます。

今回は国際ConferenceのDevRelCon と 日本国内向けのDevRel Japanのカンファレンスの同時開催、という感じで、海外出身者(日本企業にお勤めの方 | 外資系企業の日本法人や営業所に籍のある方 | 海外からこのイベントのために来日した方)も割合多く見られました。

イベント振り返り

会場は横浜駅からほど近いビジョンセンター横浜(https://www.visioncenter.jp/yokohama/price/)にて行われました。


大きな地図を表示

今回はブース運営は二人体制であったため、合間を見ながらセッションも拝見しました。

MOONGIFTさん

このイベントのリーダーでもある中津川さんの発表。

テックブログを分析して分かった始めるコツ・続けるコツというタイトルでの発表でした。

テックブログの先駆けとも言えるMOONGIFTが語る、テックブログの分析からは、「どういった失敗例があったか」の体系化がかなり「ウッ」となりました。

テックブログが長続きしない要因

私達も一エンジニア組織として、あるいはDevRel組織としてアウトプットを定期的に発信し、試行錯誤を共有する取り組みを試みてはいるのですが、なかなか安定した成果は出せておらず、やきもきしていた時期での天啓だったと思います。

失敗例から学ぶとともに、反対に成功しているパターンの解析もまとめてくださっていて、技術ブログには具体的にどのような『型』があるかというお話もあり、我々も我々にあったパターンを見つけるのがより良いコミュニティマネジメントの一歩だろうと気づきがありました。

MIERUNEさん

地方テック企業もDevRel頑張ってみた

北海道の企業であり、Web開発における地図活用に関してはその名を知らない人がいないMIERUNEさん。

古川さんの発表自体がかなりつかみを綿密に練ってあり笑いが絶えませんでしたが、その実、3人で始めたテック企業がいかにして20名を超えるエンジニアを集めるまでに至ったか、どのようにファンを増やしたか、DevRelという概念を浸透させたかといったお話でした。

Code For Japan の活動にも活躍するWeb技術

筆者も地図を作ったWeb開発を進める中で、どんどんMIERUNEさんのファンがいつのまにか入社している、というのをSNSづてに見てきていたので非常にリアルでした。

また、MIERUNEさんの所属のエンジニアの方が社のGIS講習以外にも積極的にイベントへの参加や発信をされているのを拝見しており、その狂気的なまでの大量のアウトプットに日々位置情報エンジニアたちは助けられています。

【公式ブログ】

https://www.mierune.co.jp/blog/list/1?lang=ja

【Qiita記事】

https://qiita.com/organizations/MIERUNE

【社のエンジニアの方の執筆した書籍】

https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798068923.html

【社の方の登壇例】

https://asciistartup.connpass.com/event/256613/

楽天さん

1つの事業部だけで行う DevRel とは

鶴田さんの発表。

インパクトのある会社、大きい会社におけるDevRel活動の事例、知見の発表でした。

Web開発企業としてよく聞く楽天のイメージの話に始まり、楽天社内のエンジニア文化、どの様に組織が分散化されているかといった話などを赤裸々に伺いました。

スライド中のおかいものパンダが可愛くて格言がどんどん頭に入ってきます。

ラクマ部署において、自身ができそうなこと、巻き込めそうなことを調整していく上で大変だったこと、あるいはその波及効果などについてお話で、

実際に楽天グループのエンジニアブログ『R-Hack』では目立つ記事がラクマのカテゴリで伸びているのをお見かけしており、印象に違わず膝をうちました。

ラクマiOSアプリのフルSwift化を約4年かけてやり遂げた話

https://commerce-engineer.rakuten.careers/entry/tech/0053

昨年中のこちらの話などは大いに話題になっており、今思うと、エンジニア組織をどうデザインするかといった話なんだなと思いました。

登壇

今回福岡市エンジニアカフェはスポンサー登壇の機会を頂いたので、二日目サントリーブースにて登壇いたしました。

https://speakerdeck.com/engineercafe/devrelcon2023-slide


我々がエンジニアコミュニティに対してどのような支援を行っているか、そもそも我々福岡市エンジニアカフェがどのような理念を持っているか、福岡という地におけるエンジニアのムーブメントについてお話しました。

英語話者の多いお部屋で、なかなかすべて英語でお話する…というわけにもいきませんでしたが、登壇後も温かい言葉をいただきました。

発表中にお伺いしましたが、福岡市エンジニアカフェは6割くらいの方が何らかのタイミングで訊いたことあるとのことでした。皆様ありがとうございます。

一日目、および二日目のイベントでは新顔である自分も、様々人が話しの輪に入れてくださって大変うれしかったです。

エンジニアカフェのブースにも「なんか面白そうなことやってる施設があるよ!」とお知り合いを連れて来てくださった方もおられて盛り上げていただきました。

似たような取り組みを行っている団体を紹介頂く機会もあり、ぜひまたお訪ねしてみようと思います。

1日目のスピーカーディナーでは技術者よりのDevRelと人事さんや広報を担当される方のDevRelでどうやって知見を交流すればよいか、といったような話しが自分の周りではホットでした。

全体懇親会でパワポカラオケの司会をしている@neri78氏。

(200枚に迫る勢いでお名刺をお渡ししたと思います。)

なお今回は、エンジニアカフェの実験サロンである「エンジニアカフェラボ」に所属している温水さんにもご同行願いました。

エンジニアカフェラボに所属し、エンジニアカフェのDiscordやご自身のZenn(リンク)などでエンジニアコミュニティを盛り上げてくださったことに対する特待となります。

コロナ禍でなかなか学生同士も交流する場も乏しく、4月から社会人となる温水さんが何を見、何を感じたのか併せて御覧ください。


報告書 温水

1 概要

2023年3月10日と3月11日の2日間、私はビジョンセンター横浜で開催される「DevRel/Japan CONFERENCE 2023」(以下、「DevRel」と表記)に出席した。この報告書では、4章構成でDevRelの報告内容を以下に記す。
本章では、DevRel全体のイベントを通した概要と個人的な感想を述べる。第二章では、私が実際に視聴したセッション3つとそれに対する私の考察を述べる。第三章では、DevRelの内容を踏まえた、これからのアクションプランを簡潔に述べていく。
DevRelとは、Developer Relationsの略称で、自社あるいは自社サービスと、外部の開発者との良好な関係を構築するためのマーケティング手法だ。3月10日と3月11日の2日間で開催されたDevRelでは、主にコミュニティマネージャーや現役のエンジニアを中心に、良質な人間関係やコミュニティを構築するための原理原則や方法論について、ライトニングトーク形式で説明された。発表者は30分間、このテーマをメインにプレゼンを行い、その後視聴者との質疑応答でさらに内容を深掘りするのが大きな流れである。ただ単に一方的に発表者が自分のプレゼンを終了して次の発表者に交代するような流れではなく、発表者と視聴者がお互いに交流できるという双方向性の強いイベントだった。
私は福岡市エンジニアカフェの代表兼スポンサーとして、2日間福岡市エンジニアの広報や案内を受付にて担当した。来場者や参加者に、福岡市エンジニアカフェの概要やその強みを説明するのが難しかった。受付を担当しながら、別の会場で実施される発表者のプレゼンにも実際に参加した。私は自分自身の英語力の向上を目的として、英語話者が登壇する3つのセクションに参加し、全員に英語で質問をした。どの発表内容も非常に有意義かつ面白く、今後の自分のエンジニアリングの活動や情報発信に積極的に取り入れていくべきだと考えた。
私の場合は主にTwitterで図解を使ってエンジニアリングに関する情報を発信しているが、DevRelで取り扱っている内容に関しては未経験かつ未知の分野だった。DevRelの開催前は、正直に言って具体的なイメージや活動、実施するメリットを逐一把握できなかった。しかし、2日間のDevRelを経験して、DevRelが現在のIT業界における、開発者間の良質な人間関係やコミュニティを構築する上で必要不可欠な活動だということを学んだ。発表者とスポンサーとして活動している他の参加者のレベルの高さに圧倒されながらも、非常に有意義な2日間を過ごすことができた。

2 参加セッション並びに内容の考察

本章では、私が実際に視聴したセッションの内容とそれに関する考察を述べていく。

2-1 Your Job Doesn’t End (Or Start) With Your Talk

こちらのセッションは、MongoDBのエンジニアとして活動しているJoel Lord氏による講演だ。講演の概要は、様々な講演会やライトニングトーク等の発表会で得られた経験を無駄にしないための原理原則と具体的なアクションプランである。講演の内容が非常に明快かつシンプルで、明日からでもすぐに実践できるような内容が多かった。講演会や発表会等の大衆が集まる場所では、ただ一方的に発表者の話を聞くのではなく、発表者の話を聞いて、疑問や自分の意見との違いを質問して対話することが重要であることを学んだ。それだけに留まらず、講演会等で得られた新しい経験や気付き、知識を言語化して共有化することが重要であることを改めて学ばされた。このやり方はエンジニアリング関連のイベントに限定されず、どのセミナーや発表会や読書のやり方でも通用する。
率直に言うと、私はMongoDBのファンであるが故に、MongoDBの経験談や面白いお話、その良さを共有したいがためにこのセッションに参加した。講演の終了後に私は直接Lord氏に質問した。彼は非常に気さくな方で、MongoDBにエンジニアとして活動している理由もただ単に「ものづくり」が好きだからという純粋な心意気の持ち主だった。非常に話しやすく、MongoDBに関する面白い話や経験談も聞くことができた。MongoDBに関する経験談や面白い話は、本報告書の趣旨とはかけ離れているので詳細は割愛する。
彼も、私と同様に、自分の知識や学びをアウトプットすることの重要性に言及していて、彼の意見に共感できる部分が数多くあった。人間の脳は、インプットした情報よりもアウトプットした情報の方を重要視する傾向が強い。たとえ有意義な話を聞いたとしても、それで得られた知識を自分の実生活に活かすことができなければ無意味になってしまう。私は普段Twitter等のSNSで、Figmaで作成した図解を使ってアウトプットすることを習慣化しているので、最低限アウトプットすることに関しては問題なく達成していると考える。ただ、機械的にアウトプットするのではなく、「自分が強調したい学びや知識」、「自分のアウトプットで最も大事なこと」や「自分が今後強みにしたい分野」の3つを念頭に置いてアウトプットすることでより定着するのではないかと考える。

2-2 Employer Branding 101: Developer Advocate Edition

こちらのセッションは、Contentful―すなわち、CMSを運営しているドイツのIT企業のエンジニアであるHarshil Agrawal氏による講演だ。講演の概要は、Developer Advocateの視点から良質な人材を採用するための原理原則である。講演の内容の大枠や論理構成は、Lord氏のものとほぼ大差ないものの、Agrawal氏のものは原理原則に焦点を当てた内容になっている。
ところで、Advocate(アドボケイト)とは「Advocacy」の派生語で、「支援する」「擁護する」「代弁する」等の意味が込められている。IT業界では、自社のサービスや製品を広く伝える職種として認知されている。アドボケイトの主な役割として、主にユーザに新しい製品を紹介したり、新たな使い方を伝授したりすることが挙げられる。この言葉はマーケティングにおいて、顧客の移行を最優先し、徹底して顧客本位で接する意味として活用されている。
アライドアーキテクツ株式会社が運営しているブログ「SMMLab」によると、アドボケイトに関して以下のように言及されている。

インターネットやソーシャルメディアが普及し誰でも情報の比較検討が容易にできるようになったこと、また商品やサービスに関するクチコミ評価がリアルタイムに行われるようになった背景から、「徹底的な顧客第一主義」を追求、信頼を得ることで顧客との長期的な関係性を構築し、企業の長期的な利益の獲得を目指す「アドボカシー・マーケティング」という考え方が注目されるようになった。
日本では、米マサチューセッツ工科大学のグレン・アーバン教授の著書『アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業』が2006年11月に翻訳出版されて以降に知られることになったと言われている。

上述の引用部分の内容を簡潔に述べると、アドボケイトの概念を利用したソーシャルメディアやインターネットが普及して誰もが情報を比較検討したり、リアルタイムで口コミ評価したりできるようになったことを背景に、企業が顧客と長期的な関係性を構築し企業の長期的な利益を獲得する考え方が基盤となっている。要は、簡単に製品を比較検討できる時代になってきたからこそ、顧客目線で検討するアドボケイトの考え方が今後重要になるという背景がある。
議論が逸れたが、この内容を踏まえてAgrawal氏の講演内容に言及する。大まかな内容はLord氏のものと同じで、自分の経験や学びを言語化して相手に伝えることの重要性が強調されていた。自分の経験や学びを言語化できる能力は、アドボケイトの職業でも応用でき、良質な人間関係やコミュニティを構築する上で非常に重要な鍵を握っていることを学んだ。顧客目線で物事を検討したり、製品にフィードバックしたりするのではなく、自社の製品やサービスが作られた背景やストーリーを共有することで、顧客目線に基づいて製品を開発し、提供できることを学んだ。
講演の中で、私はAgrawal氏に、なぜ幅広い物事や分野に興味関心あるいは視野を持つ必要があるのか質問した。というのは、私達エンジニアは、Webエンジニアや機械学習エンジニアというように特定の分野に特化しているからだ。機械学習やWeb、電子工作等様々な分野に手を出すと、器用貧乏になり自分の強みが生まれなくなるのではないかという懸念があった。ところが、彼は私のこのような意見に対して的確に反論した。彼は、様々な分野に精通することで顧客に最大限の価値を提供したり、顧客が抱えている問題を多種多様な視点から解決したりできる可能性が考えられると主張した。
私は、単一の分野―すなわち、Web開発の分野に特化して、顧客が抱える問題を解決することを念頭に置いている。わからない問題や、自分の分野では解決できない問題に関しては、その分野に詳細な人に任せることが問題解決の原則として考慮されるのではないかと考えた。すべての彼の意見に同意しているわけではないものの、Agrawal氏の意見は今後のエンジニアリングにおける問題解決や顧客に提供する価値を検討する上で、一個人の意見としては参考になる部分があった。
私は直接アドボケイト関連の職業に携わっているわけではない。ところが、顧客目線で検討することや自分の知識や経験を言語化して相手に伝えることはエンジニアリングでも求められる能力だと考える。

2-3 Tech Communities, Gamification and Creativity

こちらのセッションは、インドの都市であるハミルプルの国立工業高等専門学校の教員であるHarshita Jain氏による講演である。講演の概要はゲーミフィケーションの概観と、エンジニアが集うコミュニティにゲーミフィケーションを導入する原理原則や方法論に関する内容である。ゲーミフィケーションとは、企業の教育研修やモチベーションの管理にゲームの特徴を持ち込む発想である。一般的に「面白くない」、あるいは「つまらない」とみなされている仕事を「楽しい」、あるいは「ワクワクする」ものに変えて、能動的に人間を行動させる仕組みである。
ゲーミフィケーションの大まかな流れとしては、特定のタスクを設定して、それを達成されたら相応の報酬を与えるという仕組みである。ゲーミフィケーションを支える仕組みには、スコアや称号、バッジ制度等で自分の状態を具体的に数値化できる仕組みがある。特定のタスクに対する達成率や、自分の現在の成果を数値化することで、ユーザのモチベーション向上につながる可能性がある。
Jain氏の講演はゲームの仕組みを仕事に応用して生産性を上げることを提案することが趣旨だ。確かに、ゲームはほとんどの人が夢中になれるし、中には本業よりも夢中になれるものとしてゲームを列挙する人も少なくない。夢中になれることや仕組みがあれば、自ずと仕事の生産性が上がるのは言うまでもないことだろう。ところが、ゲーミフィケーションには問題がある。
問題は数多く存在するが、特に問題として考えられるのはゲームのシステムと現実社会の構造の相違点と、ゲーミフィケーションするシステムの設計に関する問題が考慮される。
第一に、ゲームのシステムと現実社会の構造の問題点に関する問題について述べる。ゲーミフィケーションは、現実とゲームの違いにより、うまく機能しないことが珍しくない。例えば、スクウェア・エニックスのロールプレイングゲームである『ドラゴンクエスト』はゲームオーバーになったときにリセットされたり、再チャレンジしたりできる。しかし、現実の世界では失敗が重大なミスや欠陥につながることがよくある。
第二に、ゲーミフィケーションに基づいたシステムの設計に関する問題について言及する。ゲーミフィケーションを設計するためには、心理学や行動経済学に関する学問に関する深い知識や洞察が必要になる。適切に設計しなければ、ゲーミフィケーションそのものが逆効果になったり、会社内であれば社員の不正行為を促進したりする原因にもなるのだ。
ゲーミフィケーションを実際のエンジニアリングの現場で適切に導入するためには、現実世界とゲームの両者の構造の違い、それに加えて心理学や行動経済学に関する深い知識かつ洞察が必要になる。その問題を解決する方法を模索することも、ゲーミフィケーションをエンジニアリングの現場に導入する上では必要不可欠になるだろう。前提として、ゲーミフィケーションに登場する概念である「報酬」や「クエスト」というような専門用語は一意性がなく、多義的に解釈できる故に非常に曖昧であることにも問題として考慮される。
総括すると、ゲーミフィケーションは実際の仕事の現場にゲームの特徴を導入するという非常に魅力的な発想ではあるものの、問題なくかつ円滑に導入するためには様々な問題を孕む。

3 アクションプラン

今回のDevRelの内容を振り返って、私たちエンジニアがこれからやるべきアクションプランは3つある。
第一に、知識のアウトプットをTwitterやQiita等のSNSで積極的に行うことが考えられる。せっかく新しい技術や有意義なセミナーをインプットしても、ただ本を読んだり、話を聞いたりするだけの受動的な学習では知識やスキルの定着は見込めない。その知識や経験を第三者が理解できるように説明することで、知識やスキルの定着度は格段に上がる。人に教えることは、知識やスキルを定着させる上では最も効果的な学習法だ。学んだ知識や新しい経験を積極的に吸収して、それを自分のエンジニアリングの改善に役立てていきたいのならば、最初にやるべきことは知識や学びのアウトプットである。これは私たちエンジニアが最優先してやるべきことだ。
第二に、幅広い分野に関する知識を習得することが考えられる。私たちが現実で遭遇する様々な社会問題は、単一の分野あるいは領域で解決できるほど単純ではないものが多い。エンジニアリングも人間の行動の延長線上でしかないので、エンジニアリングや技術の領域とは直接的に関連のない心理学や行動経済学の問題が大きく関連している。私たちエンジニアはコードをただ単に書くことが仕事ではない。エンジニアの仕事は問題解決である。少しアプローチの異なる問題解決を実践するためには、エンジニアリング以外にも様々な分野の知識を習得する必要がある。特に心理学や行動経済学は、顧客の心理行動やマーケティングに密接に関連しているので、私たちエンジニアが率先して学ぶべき学問であると言えよう。
第三に、良質な人間関係やコミュニティを長期にわたって維持するための方法を模索し続けることである。長期間にわたって良質な人間関係を維持することは至難の業だ。時には互いに衝突したり、適切な距離感や心理的安全性を見誤ったりして、人間関係を悪化させることもあるだろう。しかし、エンジニアリングを円滑に進め、かつ顧客に新しい価値や機会を提供し続けるためには良質な人間関係は必要不可欠である。現在のコミュニティや人間関係を顧みて、問題点を発見しそれを解決するために議論や対話を継続する姿勢が非常に重要になる。
これはあくまで一個人の見解の範疇を超えないが、DevRelが定期的に開催される理由の一つとして、長期間にわたって良質な人間関係を構築することの重要性やそれを実現するために必要な議論・対話の必要性を訴えることが考えられる。良質な人間関係を構築したり、それを維持したりするために必要なことに関する議論・対話は定期的に行うべきである。良質な人間関係に関する議論は一意性がなく、多義的に解釈できるだろう。ところが、「人それぞれ」という安直な言葉で終わらせずに、自分の価値観や他人の価値観の共通点と相違点を照合させて、お互いにとって利益を享受できる人間関係を構築するために必要なことを議論することには非常に価値がある。お互いにWin-winの人間関係や、参加者全員がすべからく各々の利益を享受できるコミュニティを構築するためには、それを実現するために必要なことを何度も議論・対話することが必要不可欠だ。

4 謝辞

DevRel CONFERENCE 2023の報告書作成に関して、株式会社MOONGIFTの代表取締役である中津川篤司さんをはじめとした運営スタッフの皆様には、2日間非常に有意義なイベントを開催してくださり本当にありがとうございました。そして、DevRelを紹介してくださった、福岡市エンジニアカフェのコミュニティマネージャーである田中聡至さんや、宿泊先やDevRelのチケットの手配をしてくださった株式会社サイノウの代表取締役である村上純志さんにも感謝の意を表します。福岡市エンジニアカフェや株式会社サイノウの支援がなければ、このような有意義なイベントに参加する機会はありませんでした。私にエンジニアリング関連の非常に有意義な学びの環境を提供してくださり、誠にありがとうございました。

 


終わりに

平素エンジニアカフェにおいては見識を広げるため、あるいは技術者同士をつないでいくことを継続的な目標として様々なイベントにスタッフが足を運んでおります。

ぜひ、おすすめの技術系イベントがございましたらスタッフまでお知らせいただけますと幸いです。

コロナ禍が落ち着く中においては海外のカンファレンス事情などのアドバイス等いただきたく存じます。

また、エンジニアカフェラボに限らず、福岡市エンジニアカフェおよびエンジニアフレンドリーシティ福岡では、この街で様々なアウトプットが生まれることを楽しみにしております。

Twitter(#エンジニアカフェ)やDiscordなどに「こんなの作ったよ」や「こんなことがエンジニアカフェでできたよ」などアピールいただけますと駆け寄って参りますのでよろしくおねがいいたします!

改めて、今回ブースを訪れてくださったみなさま、直前にも関わらずスポンサードを受け入れ、手厚く参加をサポートしてくださったMoomgiftはじめ運営のみなさま、大変お世話になりました!

また、同部屋で二日間ご一緒させていただいたスポンサーブースのみなさまも温かいお声がけありがとうございました。慌てずブース運営ができて大変助かりました。

ブースの様子。エンジニアカフェは入り口のとてもいい場所を手配していただきました。コーヒーもとても美味しかったです。

今回のイベントのシールコーナー。

今後とも福岡市エンジニアカフェをよろしくお願いいたします。

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